料理が苦手な悩めるママライターが包丁について学ぶ!
砥石でシャッシャッと包丁を研ぐ―。あれ、プロの料理人のすることだと思っていませんか?実は家でも簡単に研げるんです。しかも研いだ包丁を使うと、料理が驚くほど楽しく上手になるのだとか!?
そうと聞いたライターが、切れない包丁を持って向かったのは、家庭用包丁のトップメーカーの貝印が主催する「包丁研ぎ講座」。イチから研ぎ方を教わったところ、目からウロコがポロリ…
110年の歴史を持つ総合刃物メーカー貝印株式会社のkai shop推進部次長、兼マイスター推進部次長。
2010年の自社ブランド品を展開する「kai shop」一号店の立ち上げをきっかけに入社。2017年には貝印の「マイスター制度」の責任者に。
現在は、包丁研ぎのセミナーやデモンストレーションなど社内外で活躍。
そもそも、包丁にはどんな種類があるの?
包丁には、大きく分けて和包丁と洋包丁があります。例外もありますが一般的な違いは、刃体の厚さと刃が片面だけについているか両面についているか。和包丁の多くは、刃体に厚さがあり、片面にだけ刃がついている片刃です。魚をおろすときに使う出刃包丁や、刺身を切るときに使う柳刃包丁などが代表格。
一方、洋包丁の多くは両刃です。代表的なものには三徳包丁や牛刀包丁、ペティナイフがあります。みなさんのご家庭で使われている包丁のほとんどが、三徳包丁です。野菜、魚、肉の三つが切れることから名前がついた万能包丁ですが、刃が薄いので固いものはやや苦手。凍ったものや骨は避けたほうがいいですね。
左から順に、
洋包丁のペティナイフ、
三徳包丁、
牛刀包丁、
そして和包丁の出刃包丁、
柳刃包丁。
包丁の選び方、どうしたらいい?
いい包丁とは、使う人や用途にマッチしていて、切れ味やその持続性がよくメンテナンスしやすい包丁です。
包丁の素材は、主に鋼とステンレスがあります。鋼の包丁は切れ味が優れているのですが、錆びやすい。その錆びやすさを改善したのがステンレス鋼で、特に特殊ステンレス刃物鋼という素材は、錆びにくく強靭です。包丁の価格には、このような素材や刃の加工方法が反映されます。
だから、いい包丁を使いたいなら、ある程度の値段のものから選んだほうがいいでしょう。
ちょっとコワモテの林さんですが、「れっきとしたサラリーマンですよ(笑)」。
ユーモアたっぷりの口調とていねいな指導に、参加者たちは楽しく習うことができました。
包丁研ぎって家でもやれるの?
もちろん、研げます。両刃の包丁なら、次の5つのポイントを押さえれば、誰でも簡単に切れ味よく仕上がります。
たまに誤った研ぎ方をして、包丁にダメージを与えているケースもありますので、「研いだことがある」「定期的に研ぐ」という人も、5つのポイントを見直してくださいね。
- 包丁(両刃の洋包丁)
- 砥石(中砥石、刃こぼれしている場合は荒砥石も)
- 面直し用砥石
- 研ぎ台
- 新聞紙
- 深さのある容器に入った水
- このほか、タオルや雑巾を用意しておくと作業がスムーズ
砥石と面直し用砥石は水に浸しておく
砥石とは、金属を研磨する砥粒を固めて焼いたもの。面直し用砥石とは、さらに硬い素材の砥石。どちらも粒の間に空間があるので、水に入れると小さい泡が出ます。その泡が出なくなるまで10~20分程度、水に浸します。十分に浸したら、砥石が滑らないように台の上にセット。
砥石に対して刃は15°をキープ
人差し指と親指を包丁の背と刃の付け根にあて、柄を軽く握ります。刃先の角度は、砥石に対して15°が理想。砥石と包丁の背の間に、空いているほうの小指を入れ、第一関節まで入った角度が目安。
包丁を斜めに置き、もう片方の指を刃先の近くに添えて、砥石の上で刃を滑らせます。力を入れず、砥石全体を使ってゆっくり研ぐことがコツ。刃先の角度が変わっていないか、ときどき小指を入れてチェック!
刃先に“まくれ”が出るまで研ぐ
包丁の先端近く、中ほど、付け根近くと、順に研いでいきます。
研いだ面の刃先が、反対側にかすかにまくれ上がるのが、研ぎ上がりのサイン。これを“まくれ”“バリ”といいます。包丁を軽く洗い刃先を指3本でなでてみて、髪の毛1本分程度の引っ掛かりを感じたらOKです。刃先に対して垂直になでること。平行になでると指先を切る心配があります。刃こぼれがある包丁は、最初に荒砥石で全体を研ぎ、中砥石で仕上げましょう。
反対面の刃も同様に
1か所が研ぎ上がったら、次の部分に移ります。付け根付近は指が当たって研ぎにくいので、包丁を横にするとラク。片面が仕上がったら包丁を裏返し、反対の面も同様に研ぎ進めて。
研いでいる最中に出る泥は、砥粒が混じっていて研ぎの助けになるので、流さないこと。砥石の表面が乾いてきたら水滴を少し垂らします。シャッシャッという音が気持ちよく、夢中になりがちですが研ぎ過ぎに注意。“まくれ”を小まめに確認して。
新聞紙で”まくれ”をこそげ落とす
両面を研いだら、残った“まくれ”を新聞紙で取り除きます。包丁を洗い水滴を拭きとってから、研ぎと同様に15°程度の角度で刃先を新聞紙にあて、右から左、左から右へと、こそげ落すようにこすります。新聞紙がなければ、古いデニム生地を使っても大丈夫。
触ってみて“まくれ”がなくなれば研ぎ上がり!
トマトでチェック! 感動の切れ味!!
試しにトマトを切ってみました。
写真のように、手を添えなくても刃先がスッと入り、なめらかな切れ味!その快感に会場のあちこちから「すごい!」と驚嘆の声が。
ご覧ください、料理下手な私にもできた、この透けるような薄さを
次回に備え砥石の表面を平らにしておく
包丁を研ぐと、砥石の真ん中がかすかにへこみます。これが積み重なると、やがて一定の角度で研げなくなってしまいます。
そうならないよう、使い終わったらひと手間を。やり方はカンタン。面直し用砥石を表面にあてて前後させるだけ。平らになったかどうか分からない場合は、砥石の全体にエンピツで印をつけておくという方法も。それがすべて消えたら平らになった証拠です。
今回紹介した方法で、牛刀包丁やペティナイフなど、両刃の包丁ならたいていは研ぐことができます。
研ぐ頻度に「〇か月に1回」という決まりはなく、切れ味が落ちたときが研ぐタイミング。トマトを切った際に皮が押されて実が潰れるようなら、もう重症ですよ。
ところで、シャープナーは簡易的に切れ味をよくするには便利な道具。砥石と併用するといいですね。包丁の切れ味がよくなると、料理が楽しくなります。その楽しさを、ぜひ味わってほしいですね。
思っていた以上に簡単でびっくり!
家に帰り、さっそくいろいろな食材を切ってみました。これまで力任せに切っていたかぼちゃも、ゴシゴシとやっていた肉も、スパっとカンタン。その爽快なこと!
力で押し切らないから、レモンも余分な果汁を出さずに済みます。切れ味がよくなるだけで、料理の腕が上がった気分になれました。
この快感、ぜひご家庭で味わってみてほしい!!
Photo:野田真 Text:松田慶子